王妃 マリー・アントワネット 下巻
【王妃 マリー・アントワネット 下巻】遠藤周作 著 読了。
2日で一気読みしてしまった。
歴史の激流にのまれながらも自らの尊厳と思想を貫き通す王妃。その様子はわざわざ破滅の渦中へ身を投じるような行為にみえる。また、歴史を動かそうとする民衆は飢え、虐げられ続けた苦しみから、貴族や国王一家への憎しみ、妬み、恨みから、正義の名の下に暴力と殺戮という狂気の狼藉を繰り返す。
そもそもの生まれや育ちや価値観、思想が違う絶対的な階級世界のなかで、互いに歩み寄るという道は難しい。
特権を振り翳し弱いものから搾取し自己の利益だけを追求する強欲、搾取された者たちの強い憎しみが暴力や殺戮の正当化となり飛び火のように広がっていく、人間が奥底に持っているであろう人間故の凶暴性。過去から世界中で絶えず繰り返されてきた(現代の今も)戦争の残酷さや醜さが当事者目線(民衆)で描かれていたところにリアリティを感じた。
読んでいて、歴史の史実とは違うフィクションの登場人物がリアルの歴史と絡む部分に時々混乱してしまった箇所がいくつかあるが、歴史書や資料とは違う臨場感は体感できたので読んで良かったと思う。
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