一から学ぶとは
全く経験がない事を一から学ぶ事は大変だ。
未知の世界に飛び込む勇気も要るし、0から知識を得、技術を習得し、基礎と経験を積んでいく果てしない旅のスタートでもある。
昔に比べインターネットやSNSで情報収集が容易で、『学び』の姿勢や価値観も随分変わってきていると最近つくづく感じる。
わたしが子供の頃はあれこれ沢山習い事をするよりも一つの事に集中し粘り強くやり続ける事を良しとされていた。ましてや自分の意思で『習いたい』と言ったなら、遊びたくても疲れていても頑張る事が当たり前だった。
だが現在は、興味がある沢山の事に手を伸ばし、その中から淘汰していく。『嫌なら辞めてもいいからね』が前提で習い事を始めるお子さんが多いように感じる。
人それぞれやり方があるのでどちらが良くてどちらが悪いとはジャッジしないが、自分的には有限な時間の中で何かを深めていくにはある程度的を絞った方が効率が良いし、苦しくても投げ出さずやり続ける先に見える景色にこそ価値を見出せる気がする。昭和の根性論で生きてきたので、ここは今更変わらないだろう。そう、わたしは古い価値観の人間なのだ。
20年近く子供バレエを指導してきて、10年と少し大人のベリーダンスを指導してきて、ここ最近は特に学びへの考え方が大きく変化してきていると感じるようになった。
未経験の初心者で入会された方からダブルスクールの事後報告を受ける事が立て続けにあったのだ。
【やる気】があるからこその選択であるのは間違いない。その前向きな姿勢はとても素敵だ。
だが、インストラクターの立場から見ると基礎を全く習得していない段階でのダブルスクールは少し難しいと感じる。特にベリーダンスの場合、教える先生によってかなり基礎・テクニック・スタイルにばらつきを感じるからである。
クラシックバレエの場合、お教室に入ると先ずはストレッチ、バーレッスン、そこからセンターレッスンとコースはおきまりだ。とはいえワガノワ式やロイヤル式など、細かな部分は結構違う。ベリーダンスの場合はバレエ程基礎が確立・統一されていないのでかなりまちまちだ。
また、バレエの場合は幼少期から基礎を積み上げ鍛え上げてからインストラクターになるが、ベリーダンスの場合は大人になってからダンスを学んだ方が殆どで、人によってはしっかりと基礎が入ってない状態で指導している場合もあったりする。
さらにエジプシャン、ターキッシュ、ロシアンスタイル、トライバル 、あるいは完全に個人のオリジナルに至るまでスタイルが千差万別。バレエのようにメソッドが確立されていないので、同じ先生に学ばれた暖簾分けしたお教室など同系列の所ならまだしも、そうで無い場合はアプローチの違いに混乱したり、へたをすると怪我に繋がる危険性もあるのではないかと懸念する。
わたし自身の経験で言うと、最初は日本人の先生のお教室に入会したが、わたし自身のバレエの癖が強すぎて自分の適性とそのお教室のメソッドやスタイルが合わず(そのお教室を否定している訳ではく、単に自分の適性に合わなかっただけ。)外国人の先生の所で学ぶ事にした。アルゼンチン人の先生に憧れて足掛け6年程習ったがアルゼンチンスタイルは残念ながら自分に合わず、(この時諦めるのがとても辛かった)その後ロシア人の先生に2年程エジプシャンスタイルを学んだがこれも悲しい事にフィットせず、ここ数年はウクライナ人の先生からウクライナスタイルを学び、やっと自分の中で『これだ』と思う型に巡り会えた感覚を得ている。最初の日本人の先生を含めどのスタイルもそれぞれに素敵で魅力的なのだが最終的には【自分の適性や骨格に合っているか・理想とするスタイルかどうか】が選ぶポイントになってくると思う。
基礎を習得する事は本当に難しく、デリケートだ。つま先の向き一つにしても各スタイルで違う。だから習い始めで右も左もわからない状態であれこれ手をつけてしまうと逆に遠回りになるし、習得の妨げになるのではないかと思うのだ。
これはわたしが不器用だからかもしれないが、わたしには難しかった。ロシア人の先生にエジプシャンの指導を受けている時に、ウクライナ人の先生のWSで受講し習った曲を練習していると、何度も『違う』と指摘された。スタイルもメソッドも違うのだからそう仰るのは当たり前だ。その時のわたしはどちらのやり方に合わせるべきか混乱し、悩み、結果ウクライナ人の先生のグループを選んだ。これは極端な例かもしれないが日本語の文法で英語を喋るようなもので、Aの基礎でBのメソッドを踊るのは無理があるし、不自然な部分が出てくるのは至極当たり前なのである。
やる気があり、頑張る人程【ダブルスクール】を打ち明けてくる傾向にある。上手くなりたい、もっともっと踊りたい。その気持ちは素敵だし頑張ってほしいとも思う。だけどそこで少し立ち止まって考えてみてほしいのだ。
自分がどのスタイルでどんな踊りがしたいのか
将来的に何を目指したいのか
先ずは足元をしっかりと固めていく。一つ一つコツコツ目標を達成して、その先に何が見えてくるのか。
本当に上達を願うなら、最初からあれこれ欲張らずに、ひとつのメソッド・スタイルで踊れる身体作りと基礎の習得に励んでほしい。それがわたしが思う【一から学ぶ】事で、今でもそれを常に自分の心の中心に置いて毎日朝練に励んでいる。
ダブルスクールを否定している訳では無い。
ただ、そうする前に一考していただけたらと思うのだ。
メソッドには個々の差がかなりある事、基礎がある程度固まるまでは同じ動作をコツコツ積み重ねる事が大切と言う事、自分のゴールには何を設定しているのか(趣味として楽しみたいのか、プロになりたいのか等)、色々なダンサーの踊りを見て、どのスタイルが好きで、誰から学んでみたいのか。ドラマなどに触発されて、何も考えず勢いで飛び込むのは避けた方が無難だ。
単に『近いから』『リーズナブルだから』『何となく』でお教室を選んでしまわない方がいい。必ず体験や見学をして、疑問があればお教室の先生に納得行くまで質問をするのが良いと思う。ダブルスクールも考えているなら、その時に尋ねた方が良いだろう。
あなたの好奇心ややりたい気持ちを出来るだけ長く持続出来て、心も身体も健やかに楽しめるお教室を見つける事の手間を惜しまないで欲しい。魅力的なダンスを踊られる先生は沢山いらっしゃるし、マニアックで興味深い指導をされる先生も沢山いらっしゃるし、お教室によって発表会やイベントの頻度も違うし、通っておられる生徒さん達の雰囲気や、費やす費用も千差万別だ。
全てのベリーダンス好きの方に、素敵な未来が拓けますように心から願ってやまない。
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