ロシア語の余白
黒田龍之助【ロシア語の余白】読了。
NHKテレビ『ロシア語会話』、NHKラジオ『まいにちロシア語』、鉄板参考書『ニューエクスプレス ロシア語』など、ロシア語学習者なら一度はお見かけした事が必ずある黒田先生の著書のうちの一冊。本書は先生が授業中に話す面白雑談やエピソード、トリビアなど111をエッセイ方式に纏めた本だ。
教科書で何度読んでも頭に入ってこない小難しい文法ルールや何度書いても覚えられない単語、『なんでそうなるの?』と素朴な疑問を抱くロシアの人々の感じ方、考え方などが読みやすく面白く書かれてある。
先生ご自身がロシア留学し通訳の仕事をしながら経験した事や興味を持った事、ひょんな事から得た知識など小気味良く綴られているのでついつい引き込まれてグイグイ読み進んで行けた。
例えば、先生が留学中にロシアの屋台でアイスクリームを買った時の逸話。以下、本文より抜粋↓
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ロシアではアイスクリームが屋台で売られていることが多い。だから食料品店へ行ってもダメなのである。しかし屋台がどこに出店するかは、現地の人間でも分からないらしく、わたしと同じようにじっと観察を続けていた。店を見つけたら、静かに列に並ぶ。わたしもその列に加わる。
列が進み、わたしの順番がやっと回ってくる。アイスクリームの種類はどうせ1つしかないのだから、迷いようがない。買う時には数字を言うだけでいいのだ。
Один. 『1つ』
売り子はこちらの顔をチラリと見る。あれ、何か間違ったかな。
Одно, да? 『1つ、だね?』
ああ、しまった、間違えた!
アイスクリームмороженое は形容詞型変化の中性名詞である。中性名詞なんだから、それにつける数詞【1】も、男性形のодинじゃなくて、中世形のодноでなければいけないのだ。
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…とまぁ、こんな風に生きた文法や表現を体感できる良本だった。これは折々に読み返す事にしよう。万年初級者のわたしのロシア語学習に一筋の光が刺したような、語学学習を楽しくしてくれる本に出会えて良かった。
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